われわれが台本を創作するうえでの基本的な考え。
特にセリフの作り方について常に心掛けていること。
それは・・・『人間は本当のことを言わない。人間はウソをつくものだ』
ということです。
現実の生活で誰かに本音を話すなんてことありますか?
そう、そんな機会はそう滅多にありませんよね。
いや、もともと自分の本音がどこにあるのか、
当の本人にだってよくわかってなかったり。
人間が発するすべての言葉は、必ずどこかねじれている。
本人が「これが僕の本心だ!」と勢い込んでみても、
言葉にはおのずと限界というものがございますしね。
どんなに近似値を探ろうとも、自分の本心を言い表す「これだ」という言葉には
なかなか出逢えるもんじゃありません。
決して直球ストレートは投げられない。
どうしてもナチュラルにカーブがかかってしまう。
言葉はさらに、それを受け取る人間によりさらにねじ曲げられる。
バイアスがかかった解釈が、誤解を孕んだ次の言葉を生む。
劇団ERAの芝居のセリフは、そんな現実に合わせて作ってあります。
でもって、そんなふうに仕組まれた台本を、あーだこーだするのです。
役者はその瞬間の状況に合わせて登場人物の真意を計算します。
セリフの表面には露出してこないものを透視します。
即興性を重視する考え方も存在しますが、われわれはその神話は信じない。
神経を研ぎ澄まして役が憑依するのを待つ、というのはやはり無理がある。
少なくともお客さまに「ご覧いただく」という立場の人間がすることじゃないと考えるのです。