『光源』、無事にハネました。
まずはご観覧いただいた客席の皆様に、心より感謝申し上げます。
一人芝居という「異分子」にお付き合いいただくご負担を思うと、心苦しくもありがたい気持ちでいっぱいです。
タイトルは櫻坂46の楽曲から勝手に拝借いたしました(一般名詞ですので、どうかご容赦を)。
この「光源」というタイトルからの発想で、今回は照明演出における新たな挑戦を試みました。
少なくともこの25年間、4地区の舞台では誰も見たことがない演出をやろう——そう思い立って導入したのが、ローホリ(ロアーホリゾントライト)のアイデアです。
定位置ではなく緞帳の前にローホリを配置し、演者の全身を「赤」や「緑」に染め上げる。
その効果を際立たせるため、演者の衣裳は純白にし、布を購入するところから手作りしました。
春鯛『夏が追いつく前に』の巫女装束、『罪と罰と、あと何か』での自作楽器に続き、今年度は制作の流れが来ていますね。
ローホリに照らされる、白い衣裳の演者。まさに「光源」です。
また、普段は舞台袖から演者を照らす裏方的存在のSS(ステージサイドスポットライト)を、今回は舞台の上に堂々と配置しました。
演者自身が劇中でアタリを変え、色ゼラを入れ替え、置き位置すらどんどん変えていく。
こちらもまさに「光源」そのものです。
今作は、活用形の流れに沿って全六景で構成しました。
- 第一景:未然形(登場人物:1人)混沌の「赤」。古事記の国生み伝説を引用した、まだカオスで未分化な状態です。お芝居ではなく物語のはじまりであり、未来の形としての「未然形」。
- 第二景:連用形(登場人物:2人) 高校演劇でおなじみの名作『トシドンの放課後』へのオマージュ。若い女教師と生徒のあかね。高望みの志望校であっても叶う確率はゼロではない。混沌の中から進路を見出そうと動き出している「連用形」です。
- 第三景:終止形(登場人物:3人) サトシが罪を犯したことは確定しているものの、詐欺グループの全容解明には至らない。刑事、サトシ、そしてSSの光によってその存在が照らされる係長の3人が登場する「終止形」。
- 第四景:連体形(登場人物:4人) 整形の物語。顔に包帯を巻かれた娘、母親、医師、看護師。観察するまでは「整形した」と「していない」が重なり合っている。今回は「していない」世界線でしたが、再演時には「した」になる可能性もある。この観測前の重ね合わせが「連体形」です。
- 第五景:已然形(登場人物:5人) 舞台は深夜ラジオのブース。タントリズムの“まおち”こと佐伯真魚(空海の俗名に由来)、放送作家の高田さん、調整室のスタッフ、コメント欄、そして謎のAI音声。
- 第六景:活用形ナシ(登場人物:1人) 舞台は虚無の空間に戻る。演者が今度は観測者に入れ替わる。観測されるのは客席のあなた……。
確定した現在は、やがて過去となり歴史になります。しかし、歴史の見え方は解釈する者によって変わる。青ざめた思想から解放されるには、心をむなしゅうしてただひたすらに思い出すこと。観測して分かった気になるのが一番危うい——このあたりは小林秀雄の『無常ということ』をベースにしています。
演者の影が二重写しになり、主客逆転が起きる物語最終盤。演者が抱いていたはずの赤ん坊は粒子(光?)となって笑いながら消え、再び混沌の「赤」へと還っていく。未来を確定させない、名付けをしない、微睡(まどろみ)に泥(なず)む。
解釈し、意味を与えようとする行為は客席の特権です。しかし、演者は名付けられることを好みません。「私を名付けないで、私を束ねないで。表札を勝手に掛けないで」。人はモノ・コトに名前を与えることで理解し、把握し、支配し、蹂躙する。だからこそ名前を与えず、頭で解釈するのではなく心で素直に感じることこそが肝心なのです。
AI音声の使用に忌避感を抱く人もいるかもしれません。しかし、そうした違和感も含めて、一度混沌に還す必要があると私は考えます。あなたが抱くAIに対する生理的嫌悪感すらも、実は誰かに観測された結果なのかもしれません。
