台詞を一言一句、憶えた通りに決められたタイミングで喋る。
そんなのウチでは芝居とは呼びません。それだけだったらお客さまに失礼です。
まして台詞を憶えることすらしないなら、劇団員でいる資格はありません。
台詞を憶えてからが肝心です。そこから精度を高めていくのです。
お客さまのこころのド真ん中を射抜けるように。
演劇部では舞台装置も作ります。だから大工仕事も憶えなければいけません。
木が切れません、釘が打てませんでは困るんです。
西岡常一さんの言葉だったでしょうか、木は一度切ってしまったら間違いを修正できない材料です。
私たちは素人です。だから必ず失敗します。でもだからこそ一つ一つの作業を丁寧にやらなければならない。多少の狂いがあっても誤差の範囲内に納まるようにしなければならない。
丁寧な仕事をするには道具の正しい使い方を学ばなければなりません。
そして一度学んだらその基本に忠実に作業することが大事です。
いつか人間は慣れる。すると自己流に勝手にやりはじめる。つまりだれる。
基本の型というものには合理的な理由があるんです。
なのに型を保てない。崩れる。心のこもらないテキトーな作業になる。
そうなったらおしまいなんです。
全員が同じ質・同じ意識で作業できなければダメなんです。
誰か一人でもいい加減なことをしてたら全体が崩れるんです。
なぜキチンと計れないのか。なぜ真っ直ぐに切れないのか。
どうして基本通りの釘の打ち方ができないのか。
それって大工仕事だけの問題ではありません。
ひとつの舞台を作り上げるのは同じ演劇観を持っている集団でなければなりません。
芝居好きな人を寄せ集めただけでは舞台が成立しません。
まして自分勝手な演技は大迷惑なんです。独りよがりの演技プランなんて要らないんです。
ひとつの作品を協同してつくりあげようという意識が低い者は去れ。
だってウチは劇団だもの。
遊びでやってる部活動じゃないんです。
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